「アスリートは競技の練習をしていれば必要な筋肉はつく」
最近では野球で人気の大谷翔平選手やダルビッシュ選手などの影響もあって、スポーツ選手がトレーニングをするのは当たり前の時代になってきましたが、それでも今もなお先のようなことを言われることがあります。
今回はこの言葉に対してトレーナーそして、一定期間本気でトレーニングに取り組んだ競技アスリートとしてお話していきます。
アスリートがトレーニングする意味
アスリートが競技以外にあえてトレーニングする意味。
それは結論「アスリートのポテンシャルを高める」これにつきます。
アスリートの競技力は技術×身体能力と考えることができます(厳密には戦略や精神状態、環境要因など多くの要因が絡んできますがここでは割愛)。
わかりやすい例でいえば「走る」という動作。いくら技術が高くとも、そこで発揮される筋力が低かったり、速く筋力の発揮ができる身体能力がなければ、その選手が出せる記録はたかが知れています。
少々極端な例ですが元オリンピック陸上競技ハンマー投げの選手の室伏広治氏。彼が以前始球式で下手な投げ方で131㎞の剛速球(プロ野球選手でいえば大した数字ではありませんが素人と考えるととんでもない数字・・・)を投げたということがありました。
室伏さんを例にすると「それは室伏さんだから・・・」と言われそうですが、これが身体能力を高めたことで技術(今回の例でいえば投球フォーム)が未熟でも高いパフォーマンスを発揮するいい例であるともいえるのではないでしょうか。
アスリートにとっての練習とトレーニングの関係は車に例えられる
アスリートにとっての練習とトレーニング(トレーニングそのものというより、トレーニングにより強化した身体能力)はいうなればレーシングカーの「ドライバーとエンジン含む車」の関係に例えることができます。
ドライバーはつまり競技練習により培った技術。車はトレーニングにより鍛えて強くなった身体。いくらドライバーがトップレベルに上手であっても軽自動車に乗っていたら、おそらくレーシングカーに乗ったそこそこ上手なドライバーには勝てないでしょう。
逆に免許取りたての素人がレーシングカーに乗っても、そのポテンシャルを最大限引き出していい記録を出すことはできません。
練習をすることでテクニックを磨いて、トレーニングにより身体能力を底上げすることで「いいテクニックを持ったドライバーと最高のスペックを誇るレーシングカー」のように素晴らしいパフォーマンスを発揮することができます。
あえて練習ではなくトレーニングをする意味
競技練習ではなく、あえてトレーニングを導入するのは「効率的に、安全に筋肥大や最大筋力の向上など身体能力の向上をさせることができるから」です。
たしかに競技練習をたくさん実施することで、ある程度の筋力などの身体能力の向上を見込めます。
しかし、筋肉の発達には漸進性過負荷の法則というものがあり、つまりこれは段階的に負荷を上げていかなければならないということなのですが、競技練習では定量的に負荷を調整することができにくく、成長を確かめにくいことや負荷を増大させていくということがしにくいのです。
また、筋肉をつけようと競技練習をハードにやろうとすると競技によってはコントロールしきれないイレギュラー(コンタクトやサーフェスの整備不良等)が発生し、怪我のリスクを高めてしまいます。一方、正しくフォームを習得したトレーニングであれば、身体にとって無理のない動作で安全かつ、適宜負荷をコントロールしやすいため筋力の向上などにとって最大限効率的に鍛えることができます。
競技動作に負荷を与えたらどうか
では、競技動作そのものに負荷を与えたらいいのではないか?と考える方も多いでしょう。例えば、野球部員のバットに重りをつけて素振りするなどがいい例かもしれません。いかにも競技動作そのものだし、そこに負荷を加えることで競技パフォーマンスが上がりそうな感じがしますよね。
確かに全く効果がないとは言いませんが、あまり効率的ではないと考えます。
この理由は単純で、そもそも負荷のかかり方しまっておいしまっており本来鍛えたい能力とは違うものを鍛えることになっているからです。
どういうことかというと、バットを振る動作は身体を中心に横方向に回旋するような動作です(厳密にはもっと複雑)。つまり、回旋動作そのものに負荷を加えなければいけないので、この場合の負荷のかけ方として正しいのは「後ろからバットを水平に引っ張るような負荷」つまり、ファンクショナルトレーナーなどを利用して回旋動作しながら横方向へ引っ張るような動作に負荷をかけることとなります。
しかし、先に例に挙げたような「重りをつけた素振り」のような競技動作そのものに負荷をかけるやり方では、重りは地面に対して垂直に負荷がかかりますので、本来負荷をかけるべき方向と違っており競技パフォーマンス向上へ、ここで養った筋力を転換していくのは困難なのではないかと考えます。
力の方向を考えないとトレーニング効果がないばかりか時間の無駄や、最悪の場合にはケガにも直結してくるので非常に非効率的です。
トレーニングで競技力が低下することはあるか
結論、トレーニングで競技力が落ちることはあります。
よくある例では筋肉を大きくしようとしてボディビルディング的なトレーニングプログラムを採用した例です。ボディビルの場合、筋肉を大きく綺麗にすることが至上命題。極論、最大筋力や爆発力が向上する必要はありません。そのため、高回数で筋肉にジワジワ負荷をかけて追い込むような内容が多いのですが、アスリートが同様な内容をおこなうと筋肉は大きくなりますが、最大筋力や爆発的な筋力の発揮のできない筋肉になる可能性が高いです。そうなると筋肥大をしたことで体重が増加したにも関わらず、出力は大きくなっていないためシンプルに運動効率が低下してしまいます。
また、仮に身体能力が向上させるようなトレーニングを実施したとしても、同じく競技力が低下することもあり得ます。
それはどういうときかというと「向上した身体能力に合った身体動作を獲得できていない」場合です。筋力が向上することでこれまで100の力で実施していた運動が80の力で実現できるようになったとしましょう。すると、これまで通りの感覚で動くと想定以上の動作をしてしまい意図していない結果が出る可能性が出てきます。そのため、身体能力が向上する場合には競技練習をたくさん積んで、身体能力と感覚含め身体運動のすり合わせをしていかなければ競技力としては低下する可能性があります。
アスリートのトレーニングにはアスリートのトレーニングに特化したトレーナー
トレーナーといっても、トレーナーにより様々な得意分野を持っておりボディメイクに特化したトレーナーやストレッチなどケアに特化したトレーナー、そして競技力向上などのトレーニングに特化したトレーナー。
特にアスリートの競技力向上のためのトレーニングは、かなり複雑に考えることがあるためしっかりとその領域を得意としたトレーナーに任せるべきです。
弊社ではストレングス&コンディショニングスペシャリストやアスレティックトレーナーといった競技力向上などに特化した国内でもトップクラスの資格を有したトレーナーがサポートいたしますのでご安心ください。
チームや選手それぞれの課題や目標に合わせたトレーニングプログラム等を作成し、実行まで支援いたしますのでご興味おありの方はぜひお気軽に一度ご相談ください。